ダージリン・ファーストフラッシュ ≪2025≫

春の訪れとともに、インド・ヒマラヤの麓、ダージリンの茶園では今年も静かに新芽が芽吹きました。
この時期に摘まれる特別な紅茶、それが「ダージリン・ファーストフラッシュ」です。
『ファースト=最初』『フラッシュ=芽吹き』
その年、最初に摘まれた、新芽の紅茶。
2025年のこの春に収穫されたばかりの初摘み紅茶を、ダージリンから遠く離れた土地に住む私たちも楽しめる季節になりました。

ダージリン・ファーストフラッシュは、紅茶の中でも特に繊細で香り高いことで知られています。
紅茶なのに緑茶のように淡く透明感のある水色。
そしてひと口飲めば、爽やかで優雅な香りがふわっと広がり、口の中で柔らかく消えていきます。
2025年の春摘みは、冬の間にゆっくりと養分を蓄えた茶樹が、寒暖差と霧の影響を受けて育ったことで、例年以上に香りが立ち、味に奥行きのある仕上がりになっていると言われています。
その香りはマスカテルフレーバーといわれるマスカットのようなフルーティーさ、若草のような瑞々しさ、あるいは春の森を思わせるような清々しい香りとして、多くの人を魅了します。

紅茶は一年を通して何度か収穫されますが、ファーストフラッシュはその年のはじまりの紅茶。
そしてダージリン地方の茶園は標高が高く、気候が厳しいため、育つスピードもゆっくり。
その分一年に限られた量しか生産できない貴重な紅茶なのです。
しかも、ファーストフラッシュの茶葉は完全に発酵させない浅い発酵で作られることが多く、その繊細さゆえに茶園の技術や自然条件の差がはっきりと味に表れる、いわば「紅茶の芸術」とも呼ばれています。

紅茶は「農作物」。
同じ茶園でも、気候や収穫時期によって毎年味が変わります。
2025年のファーストフラッシュは2025年にしか存在しません。
まるでワインのヴィンテージのように、その年の自然を、その一杯の中に封じ込めたもの。
だからこそ、今この時にしか出会えない、一期一会の味なのです。

ダージリン・ファーストフラッシュは単なる「お茶」ではありません。
それは、ヒマラヤの春が育んだ生命の息吹を味わうような一杯です。
忙しい日常の中で、この繊細な紅茶に静かに向き合う時間は、きっと心を柔らかくほどいてくれるはずです。
今年の春だけの、美しく儚い味わいを、ぜひ味わってみてください。

Shutterstock 412948945